鷺ヶ森層の鱗木

歴史試料


このサンプルは、橘行一氏が採取したものだ。橘氏は長崎大学で教鞭をとられたあと、昭和39年に岩手大学に移動してきたそうだ。

地元の猿沢小学校の先生は「鯉のような魚の化石」と間違えたそうだが、確かに鯉に似ている(『岩手の地学』第50号小林氏の寄稿より)。この化石は鱗木(りんぼく)というソテツに似た樹皮をもつ裸子植物の化石であり、4億年ほどの古い地層に含まれることがある。この化石を発見したことで、橘氏は"Devonian Plants First Discovered in Japan"という重要な論文を著している。論文が書かれたのは1950年なので、岩手大学に赴任するずっと以前の仕事のようだ。

岩手県で見つかった鱗木は ”Leptophloeum cfr. australe”という種類で、デボン紀の示準化石であるスピリファーと一緒に出てくることもあるらしい。

鱗木が見つかったことにより、南部北上(岩手県の南側)がデボン紀の頃 南洋に浮かぶ島だったことが分かった。

植物が陸上に進出したのは、大体5億年前であり、それから適応放散を繰り返し、一億年後のデボン紀〜石炭紀には温暖な気候を背景に、巨大な裸子植物の森林が陸上の大部分を覆い尽くしたと考えられている。これにより地球大気の酸素濃度が大きく上昇したと考えられている。

当時の酸素濃度は現在の地球大気(21%)より大幅に高く30−35%に達してのだそうだ *。だから足の生えた魚=両生類が未熟な肺で上陸しても、なんとか呼吸して生きながらえることができたのだろう。そう考えると面白いよね。

詳しい展示は県立博物館にあるので見に行ってくださいな。

*「生物はなぜ誕生したのか」ウォード・カーシュヴィンク著より

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2021年6月4日20:20